統合失調症とは
統合失調症（とうごうしっちょうしょう）は、決して珍しい病気ではなく、日本ではおよそ100人に1人が発症するといわれています。
この病気は、「考え方」「感情」「行動」などがうまくまとまらなくなり、現実とのつながりが弱まってしまうことで、さまざまな症状があらわれます。
その結果、仕事や学業、日常生活に支障をきたすことがあります。
以前は「精神分裂病」と呼ばれていましたが、2002年に現在の病名に改められました。
多くの方は10代後半から30代ごろに発症しますが、それ以外の年代でも起こることがあります。
主な症状について
統合失調症では、症状のあらわれ方によって大きく「陽性症状」と「陰性症状」に分けられます。
発症して間もない急性期には陽性症状が目立ち、時間の経過とともに陰性症状が現れるようになります。
陽性症状（ようせいしょうじょう）
本来は存在しないものを「ある」と感じてしまう症状です。
代表的なものには次のようなものがあります。
- 幻覚：実際にはない声が聞こえる（幻聴）など
- 妄想：誰かに監視されている、悪口を言われているなどの被害妄想
- 思考の混乱：話の内容がまとまらない、会話が支離滅裂になる
- 自己と他人の境界のあいまいさ：他人に支配されているように感じる など
陰性症状（いんせいしょうじょう）
本来あるはずの心の働きが弱まってしまう症状です。
- 喜怒哀楽が乏しくなる
- 何をするにも意欲が出ない
- 思考力が低下し、会話が少なくなる・続かない
さらに、集中力・注意力・記憶力の低下など、
「認知機能」にも影響がみられることがあります。
これにより、仕事や家事などを最後までやり遂げることが難しくなる場合もあります。
診断について
診断は、医師が患者さんの症状のあらわれ方や経過を丁寧に確認し、他の病気との区別（鑑別）も含めて慎重に行います。
発症の原因
はっきりとした原因はまだ解明されていませんが、遺伝的な体質に加えて、ストレスや環境の変化などの要因が重なることで発症するのではないかと考えられています。
治療について
治療は主に、薬物療法と心理社会的療法を組み合わせて行います。
薬物療法（薬による治療）
脳内のバランスを整えるために、抗精神病薬を用います。
抗精神病薬には「定型抗精神病薬」と「非定型抗精神病薬」があります。
現在は、副作用が少ないとされる非定型抗精神病薬（例：リスペリドン、オランザピンなど）がよく使われます。
ただし、体重増加や高血糖などの副作用が起こることもあるため、定期的な検査や医師の管理が大切です。
心理社会的療法
薬による治療と並行して、再発防止や社会復帰をめざす支援も行われます。
主な方法には次のようなものがあります。
- 心理教育：病気や薬のことを理解し、再発を防ぐための知識を学ぶ
- ソーシャルスキルトレーニング（SST）：人との関わり方や社会生活のスキルを身につける
- カウンセリング：不安や悩みを整理し、気持ちの安定をはかる
これらを組み合わせながら、患者さんが安心して生活できるようサポートしていきます。